身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
その後、両親と椿は店に戻り勤務を続けた。仕事を終え自宅に帰ってきた後、椿は夕食前のわずかな時間を使ってこっそりと外へ出て、仁へ電話をかけた。

妊娠の報告もしなければならないが、なにより仁が菖蒲の帰宅をどう思ったのか、不安でじっとしていられなかったのだ。

『椿、どうした。姉のことか?』

電話をとった仁は、椿の思考を先回りする。

「今夜、少しだけお会いできませんか? 遅い時間でもかまいません。お時間は取らせませんから……」

椿の必死な様子に、仁は『わかったから落ち着け』となだめる。

『二十二時頃でかまわないか? 仕事帰りにそちらに寄る』

「いえ、私が仁さんのお家に向かいます。ご迷惑でなければ」

仁が水無瀬家を訪れれば、必然的に菖蒲と再会することになる。椿はそれが恐かった。

椿の意図を察したのか『わかった』と大人しく了承する仁。

『では、二十二時頃に来てくれ。部屋まで案内するようコンシェルジュに話を通しておく』

「ありがとうございます」

通話を終え居間に戻ると、テーブルには普段より豪勢な夕食が並んでいた。

菖蒲がエプロン姿で台所から味噌汁を運んでくる。今日の夕食は菖蒲と母が協力して作った。

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