身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
椿に好意的であることに間違いはなさそうだ。ホッと安堵して紅茶を飲む。

「当分はふたりで暮らすつもりなのだろう? 若いうちは私たちのことなど気にせず、楽しみなさい」

椿が気負わないよう、あえて距離を置いてくれているのかもしれない。

父親の言葉に、母親はケーキを口に運ぶ手を止めて慌てて言い添える。

「ああ、でも、赤ちゃんが生まれたら顔を見せてちょうだいね。出産後は結婚式も挙げるつもりなのでしょう? 白無垢と色打掛、どちらがいいかしら? ああ、お色直しで両方着てしまえばいいわ!」

「母さん。事前に話したじゃないか、プレッシャーを与えるのはよそうって」

「そうだった……ごめんなさいね」

やはり気を遣って示し合わせてくれていたようだが、心の底ではたくさん期待が膨らんでいるらしい。

どれも微笑ましいものばかりで、椿はプレッシャーを与えられるどころか胸が温かくなってクスクス笑ってしまった。

そんな椿を見つめる仁の目も、どこか穏やかに感じられた。


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