身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
ふたりきりで過ごす時間は、子どもが大人になるまでしばらくお預け。

もちろん三人の生活も幸せには違いないが、それはそれ。ふたりきりでいられる時間も同じくらい大事なのではないかと椿は考える。

というより、ふたりきりで過ごす時間を基盤として三人で過ごす時間が成り立つのであって、そこを飛ばすのは夫婦のコミュニケーション的に問題があるのでは?と椿は思い至った。

「私、仁さんの帰りを待つのは苦じゃありませんよ。一緒に暮らしていれば、朝、見送ることもできますし」

「だが、なにかあったら――」

「体調が悪い日は実家に戻ってもいいですし、いざとなったらコンシェルジュの方を呼ぶこともできますから」

椿の言葉を受けて、仁は顎に手を添えて考え込んだ。リスクと願望を天秤にかけて葛藤しているのかもしれない。

「……一緒に暮らすか? といっても臨月までの三カ月だけだが」

「はい!」

実家の近くの病院で出産をするため、臨月までという限られた期間だけ。

それでも、三カ月間、かけがえのないふたりきりの時間を最大限楽しもうと椿は思った。

「店の方は大丈夫か? 今、忙しいんだろう?」

「まだ検討の段階ですし、実際に忙しくなるのは来年以降かと。といっても私が育休に入ってしまうこともあって、姉が主体でやってくれています」

< 237 / 258 >

この作品をシェア

pagetop