身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「反対なんてされませんよ」

「菖蒲にはバカにされるだろう。あと少しで出産だというのに我慢できないのかと」

ふたりで笑って体を寄せ合う。仲良く菖蒲にバカにされればいい。

片時も離れ難いほど、お互いが愛おしくて仕方がないのだから。



ふたりきりの生活は穏やかに過ぎていった。

平日の仁は遅くまで働いているが、なるべく早く帰ってこようとしてくれているのを椿は感じる。

夕方以降は自宅からリモートで部下に指示を出すことも多くなり、自室にこもる時間も長いが、それでも同じ家の中に仁がいるという事実は椿を安心させた。

今日も自室でリモート会議をする仁に、椿は携帯端末でメッセージを送る。

【夕飯ができたので、時間が空いたら食べに来てください】

暇になったときに見てくれれば充分なのが、思いのほかすぐに返事がきた。

【五分でそっちに行く】

なんだか急かしてしまったようで申し訳ない気持ちになる。仕事を優先してもらってかまわないと伝えてはいるのだが。

椿がご飯や味噌汁をダイニングテーブルへ運んでいると、仁がやってきた。

「大丈夫か?」

茶碗が重たそうに見えたのか、仁は慌ててお盆を受け取り運んでくれる。

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