身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「これくらい大丈夫ですよ」

苦笑するも仁は聞かない。テーブルにお盆を置き椅子を引いて椿を座らせると、仁はキッチンに戻り、煮物と焼き魚、酢の物を椿の代わりに運んできてくれた。

「あの、忙しいようでしたらお仕事続けてくださいね? 私の方は優先してくれなくて大丈夫ですから」

「気にするな。優先なんてしていない」

はっきりと言い切った仁だが、不満そうに小声で付け足した。

「二十時から二十一時の間は食事をするから取引先との打ち合わせを入れるなと言っているのに、うちの秘書たちは融通が利かないから……」

――すごく優先してくれてる……!

嬉しいが仕事の邪魔になるのは椿も本意ではない。負担にはなるまいと、仁がいなくても平気ですよと気丈な振りをする。

「あの、仁さんがお仕事で必要とされているのは誇らしいことですし、私はひとりでも全然平気ですから。全っ然!」

「……そうか」

気を遣わせないどころか、捨てられた子犬のような目をされ椿は焦る。

――しょげちゃった……!

仁の扱いが割と難しいことに最近になって気づいた椿だ。

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