身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「シャワーを浴びてくる。終わったら寝かしつけてやるから、少しだけ待っていろ」

口づけを落とし、仁がリビングを出ていく。

――寝かしつけるって、まるで子どもみたい。

不満だが、愛を注がれていることに違いはなく、まんざらでもない椿だ。

こういう日は、ふたりで生活して本当によかったと痛感するのだった。



ふたりきりの時間はあっという間に過ぎ、臨月を迎えた椿は実家へ。

この頃の椿のお腹はとびきり膨れており、仁曰く「すいか丸呑み」である。

さすがの菖蒲も臨月は見慣れないのか、あまりの大きさに顔を合わせるたびにぎょっとされる。

「そのお腹で無理をして着物を着なくてもいいんじゃない?」

「そこまで苦しくないよ。……でもちょっと意地もある」

そう言って椿は菖蒲に携帯端末のディスプレイを見せた。妊娠七カ月頃から始めたSNSで、着物の着こなしや豆知識を載せている。

自身の着物コーデや妊娠中も苦しくない着付けの仕方などを掲載したら、なかなか好評でフォロワーも増えてきた。

「出産まで着物を着続けたいって、SNSで宣言しちゃった」

「またくだらないことして……」

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