身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
だがひとつ、椿が不思議に思ったのは仁との関係。
仲睦まじい恋人同士に見えたのに、あれは菖蒲の演技だったとでもいうのか。
いずれにせよ、仁の方は菖蒲を信じていたはずだ。真実を知れば、ひどく傷つくことだろう。
両親は京蕗家に真実を告げまいとしていたが、〝婚約者の失踪〟はそう長く隠し通せるものではなかった。
対外的には、菖蒲は体調を崩し長野にある親戚の家に移り住み療養しているということになったが、仁は納得しなかった。電話一本も繋がらない状況で療養とはどういうことかと。
嘘は一カ月と持たず、次第に両親は追い詰められていった。
そんなとき、椿が店じまいを終え家に帰ってくると、一足先に帰っていた両親が居間で正座をして向き合っていた。
通りがかった椿を見て、父は思いついたかのようにぽつりとこぼす。
「菖蒲の代わりに、椿ではだめだろうか」
衝撃的な言葉を耳にした椿は、父を見つめたまま呆然と立ち尽くす。
「お父さん! 姉の代わりに妹を嫁がせてほしいなんて、そんな虫のいいことを京蕗さんにご提案できないわ!」
「しかし、もう隠しきれまい。京蕗さんは菖蒲に会わせろと再三連絡してくるんだ。それに、どこから情報を得たのか知らないが、薄々感づいている」
仲睦まじい恋人同士に見えたのに、あれは菖蒲の演技だったとでもいうのか。
いずれにせよ、仁の方は菖蒲を信じていたはずだ。真実を知れば、ひどく傷つくことだろう。
両親は京蕗家に真実を告げまいとしていたが、〝婚約者の失踪〟はそう長く隠し通せるものではなかった。
対外的には、菖蒲は体調を崩し長野にある親戚の家に移り住み療養しているということになったが、仁は納得しなかった。電話一本も繋がらない状況で療養とはどういうことかと。
嘘は一カ月と持たず、次第に両親は追い詰められていった。
そんなとき、椿が店じまいを終え家に帰ってくると、一足先に帰っていた両親が居間で正座をして向き合っていた。
通りがかった椿を見て、父は思いついたかのようにぽつりとこぼす。
「菖蒲の代わりに、椿ではだめだろうか」
衝撃的な言葉を耳にした椿は、父を見つめたまま呆然と立ち尽くす。
「お父さん! 姉の代わりに妹を嫁がせてほしいなんて、そんな虫のいいことを京蕗さんにご提案できないわ!」
「しかし、もう隠しきれまい。京蕗さんは菖蒲に会わせろと再三連絡してくるんだ。それに、どこから情報を得たのか知らないが、薄々感づいている」