身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
京蕗家ほど金と人脈があれば、手に入らない情報などないのではないかと椿はぼんやり思った。

父は立ち上がり椿のもとまでやってくると、両の肩に手を載せ、力強く揺らした。

椿はがくがくと揺さぶられるがまま、父の力強い目を見つめ返す。

「お前が菖蒲の代わりに京蕗さんの嫁になるんだ。京蕗さんのために、立派な子どもを産みなさい」

はい、とは言えなかった。その内容を理解するには、あまりに突然すぎて。

母も菖蒲が姿を消した日のような蒼白な顔で椿を見つめている。

しかし、父を止めることはしなかった。止められなかったのか、あるいは、母も藁に縋るような思いだったのかもしれない。

この瞬間、椿の運命は決まった。


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