身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「大丈夫か」

「あ……はい……ありがとうございます」

そのとき初めて、椿は自分の体が言うことを聞かないことに気づいた。

昨晩の無茶がたたったらしい。そういえば夜中に目を覚ましたとき、腰や脚が重たいなぁとは思っていた。

仁は椿を抱き上げ、ベッドの上に丁寧に寝かせた。あっという間の出来事で椿はなにも言えず、ぽかんと目の前の仁を見つめる。

仁はスラックスこそ穿き終えているものの、シャツはまだ羽織りかけ。

朝日を浴びて逞しい胸がいっそう隆々としており、見つめることすらはばかられドキリとした。

夕べはそこに触れていたはずなのに、光源が変わるだけで違って見えるのだから不思議だ。

「君のご両親には連絡を入れておく。しばらくここで休んでいろ」

「え……でも、仕事が――」

「うまく伝えておく。俺は家を出るが、好きに使ってくれてかまわない」

感情のない声で淡々と言い置くと、仁は部屋を出ていってしまった。

……好きに使ってって……この家を?

冗談ではない、と椿は焦る。こんな場所でひとり残されたところで、心も身体も休まらないことは明白だ。

なにより店のことが心配である。
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