身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「よくやった。疲れているなら休みなさい。店なら大丈夫だ、午前中に来る予定だった三条様は体調を崩されてキャンセルになったから」

高価な着物を必ず買ってくれる上客が来店を見合わせるというのだから落ち込んでいそうなものだが、それすら感じさせないほど父は揚々としている。

「そういうことなら……すみませんが午前中だけお休みをください」

両親へ、そして従業員の西島にもペコリと一礼する。

西島はパート社員で、椿よりも母の年齢に近いベテランだ。知識も豊富で、接客経験が浅い椿をサポートしてくれる心強い女性である。

それでいて椿をきちんと立ててくれるのだから、できた人だ。

「お大事になさってくださいね」

「ありがとうございます、西島さん」

椿は店舗の裏口から外へ出て、徒歩一分のところにある自宅へ向かった。

まずはシャワーを浴び、ヘアメイクを直して午後に備えなければ。

脚腰は相変わらず重たいが、そんなことは言ってられない。

椿はまだ混乱でぐちゃぐちゃしている頭を落ち着かせるように、熱いシャワーを浴びた。


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