身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「菖蒲さんとの婚約を白紙に戻し、あらためて椿さんと結婚を前提にお付き合いさせていただこうと思っています」
婚約ではなく交際だったことに椿は唇を引き結んだ。つまり、振られる可能性もあるということだ。
仁は椿を、自分の妻に相応しいかどうか試すつもりなのかもしれない。
しかし、父はすっかり気をよくして、わだかまりはなくなったとばかりに喜んでいる。
「ありがとうございます。椿は、菖蒲ほど器量はよくありませんが、体は健康ですから――」
「水無瀬社長」
突然、仁が父の言葉を遮った。
ふと見上げれば、仁はひどく険しい顔つきで父を睨んでいる。
「椿さんは、菖蒲さんに劣るのですか? 私に粗悪品を売りつけようと?」
「け、決してそんなことは! そ、その、椿は何事にも一生懸命で心根も優しく、姉とはまた違った感性を持っていて――」
しどろもどろになって言い訳を始めた父へ、仁は静かに警告する。
「彼女を私の妻として迎えてほしいというのでしたら、今後一切、彼女を貶めるような発言をしないでいただきたい。私が不愉快です」
椿は驚いて、仁の横顔をじっと見つめた。もしかして、庇ってくれたのだろうか。
婚約ではなく交際だったことに椿は唇を引き結んだ。つまり、振られる可能性もあるということだ。
仁は椿を、自分の妻に相応しいかどうか試すつもりなのかもしれない。
しかし、父はすっかり気をよくして、わだかまりはなくなったとばかりに喜んでいる。
「ありがとうございます。椿は、菖蒲ほど器量はよくありませんが、体は健康ですから――」
「水無瀬社長」
突然、仁が父の言葉を遮った。
ふと見上げれば、仁はひどく険しい顔つきで父を睨んでいる。
「椿さんは、菖蒲さんに劣るのですか? 私に粗悪品を売りつけようと?」
「け、決してそんなことは! そ、その、椿は何事にも一生懸命で心根も優しく、姉とはまた違った感性を持っていて――」
しどろもどろになって言い訳を始めた父へ、仁は静かに警告する。
「彼女を私の妻として迎えてほしいというのでしたら、今後一切、彼女を貶めるような発言をしないでいただきたい。私が不愉快です」
椿は驚いて、仁の横顔をじっと見つめた。もしかして、庇ってくれたのだろうか。