身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
デートの当日。仁は仕立て上がった結城紬の着物にモダンな角帯を合わせて、カジュアルながらも小洒落た装いで店を出た。

椿はというと、この季節にぴったりの紅い春牡丹と緑柳が描かれた春らしい小紋を選んだ。

「お店ですが、私なりにピックアップしてきました」

椿が携帯端末を見せると、仁は「わざわざ調べてきたのか?」と驚いた顔をした。

「考えておいてっておっしゃっていたので」

「……調べさせるつもりはなかったんだ。和食か洋食か、その程度指定してもらえれば」

仁がバツの悪そうな顔をする。椿は勘違いしていたことに気づき、わっと赤面した。

「す、すみません……」

「いや、俺が言葉足らずだった。すまない」

仁はせっかくだから見せてほしいと椿の携帯端末を覗き込む。

候補に十件もピックアップされているのを見て、もう一度「気を遣わせて悪かった」と謝罪した。

「まだ夕食には少し早い。腰を落ち着けてこの後のことを話そう」

「でしたら喫茶店に行きますか? あ、ちょうどいい甘味処が近くにあるんです!」

すぐさま心当たりを検索し、見つけたウェブサイトを仁に見せると、彼は困った顔をして椿を覗き込んできた。

「君は普段からそうなのか?」

なにを尋ねられたのかわからず、椿は「はい?」と間抜けな声をあげる。
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