身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「いや。自分で店を調べて提案してくる女性は初めてだったから、少し驚いた」

椿はハッと硬直する。もしかして出しゃばってはいけないところだったのだろうか。

男性とお付き合いなどしたことがないから、正しいデートの仕方がさっぱりわからない。

食事をする店や着るものを考える前に、男性を立てる方法や女性としての振る舞いを学んでおくべきだったと激しく後悔する。

「すみません、私ったら、勝手に!」

「いや、責めているわけじゃない。ただ――」

仁は口元を隠すように手を当てるが、その奥で、頬がぴくりと持ち上がったのを椿は見逃さなかった。

「君をリードしなければと気構えていた自分がなんだかおかしくなってきた」

そう言って短く肩を震わせる。もしかして、笑っている……?

「……気構えて……?」

仁ほどの男性が椿を相手に気構えるなどとは。にわかに信じられず尋ね返す。

「デートとは男のエスコート能力を品定めする場だろう」

「品定めってなんのことですか? 一緒にご飯を食べに行くんですよね?」

椿の言葉に、今度こそ仁はくくっと喉を震わせて笑った。

なぜ笑われたのかさっぱりわからず、椿は仁を見ておろおろとする。
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