身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「何が食べたいか、考えておいてくれ」

「私、好き嫌いはありませんので――」

「言っておくが、意思のない女は好きじゃない」

「……考えておきます」

なんでもいいで済めばいっそ気が楽だったが、そうはさせてもらえなかった。

一カ月後、店で着物の仕立て上がりを確認し、そのままふたりで外食をすることになった。

仁はどんな食べ物が好みなのか。うまく彼に合わせられなければ振られてしまうかもしれない、そんな怖い考えが頭をよぎる。

仁が帰った後、椿は質のよさそうな料亭や割烹、小料理屋を調べ、いくつかピックアップした。

せっかく着物姿で街を歩くのだから和食がベターだろう。

自分の装いについても頭を悩ませる。菖蒲は藤色や白練などの上品な色みの着物で仁の隣を歩くことが多かったけれど、同じものが椿に似合うとは思えない。

椿が着こなせて、かつ仁の隣に立ち遜色のないものを。

仁のパートナーを立派に務めあげることができるのか、考え始めると不安と劣等感でいっぱいになった。


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