身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「いや、すまない。そういうところ、君は昔から変わらないなと思って」

「はぁ……」

ぽかんとしていると、突然仁の手が伸びてきた。指先で優しく頬を撫でられ、途端に椿の顔が熱くなる。

「せっかくだから、今日は楽をさせてもらおう。その甘味処に連れていってくれ」

「あ、はい!」

椿は店からそう遠くない場所にある甘味処に案内した。

大正時代にでもタイムスリップしたかのような町屋風の外観。内装は落ち着いた木のインテリアで統一されていて、着物姿が似合う和の店だ。

メニューは和洋折衷。和の食材が流行りの洋風スイーツにアレンジされていたり、和風の甘味の中にクリームやムースが入っていたり。

メニューを見て悩む椿。

夕飯前にお腹を膨らませすぎてもいけない。がっつくのもよくないだろうとドリンクを頼むことにした。

「私はずんだラテで」

「俺は桜あんみつと抹茶のセットにする」

仁の意外に重いチョイスに椿は驚く。

「仁さんって、甘いものがお好きなんですか?」

「ああ、嫌いじゃない」

メニューにあった桜あんみつの写真には、桜の白玉団子やほうじ茶プリン、黒糖寒天など心惹かれる甘味がたくさん入っていて、椿は正直羨ましくなった。

だが、やっぱり私も同じものにする!なんて子どもっぽいこと言うのは躊躇われ、ぐっと堪えた。

菖蒲ならば絶対にそんなことは口にせず、我が道を貫くはずだ。
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