身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
運ばれてきた桜あんみつを、椿は物欲しそうに――もちろん本人にその気はないのだが――じっと見つめる。

「あの、それ、美味しいですか?」

尋ねてみると、仁は無言のまま木のスプーンで桜白玉とあんをすくい取り、椿の前に差し出した。

「……え?」

「食べたいんだろう。さっきからそんな顔をしている」

顔色を読まれ、椿は思わず赤面する。

「あの……いいんでしょうか?」

間接キスですけど……とは口に出して聞けなかった。

「さっさとしろ。落ちる」

そっけない仁の言葉に観念して、椿はスプーンにかぶりつく。

もちもちの白玉から桜の香りがふんわりと漂い、あんと相まって上品な甘さが口に広がった。

「おいしいか?」

「はい! すごく!」

明るくなった椿の表情を見て、仁はくつくつと笑い出す。

また笑われてしまった。今度はおいしいと言っただけなのに。自分の態度はおかしいのだろうかと不安になる。

「そんな顔をするな。バカにしたわけじゃない」

仁が頬杖をついてにんまりと甘く微笑む。悪戯っぽい砕けた表情は、椿が初めて目にするものだ。

「頼めばよかっただろう。どうして遠慮なんてしたんだ?」

「それは……タイミングを逃したといいますか」
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