身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
見目こそとびきり美しいが、自身も認めるひねくれ者。

そんな菖蒲は、妹に対する態度も酷いものだった。

『私、あの子が嫌いなのよ。なんにも知らない顔しちゃって』

なぜ妹に対して攻撃的なのか、そう尋ねた結果、返ってきた答えがこれだった。

『妹は君を尊敬しているようだが?』

『そういう能天気なところも大嫌い』

『酷い姉だな』

妹の椿は天真爛漫で、菖蒲とは違い、好きなことを好きと言える女の子だった。

四年制の専門学校に通っていて、着物の知識をどんどん吸収していく。

心の底から勉学を楽しんでいるように見えた。

『真っ直ぐでいい子じゃないか。正直、君にいじめられている姿を見ると気分が悪くなる』

『ふぅん。仁はああいう子が好みなのね。ロリコンなのかしら』

菖蒲が意地悪く笑う。

『年齢どうこうじゃない、人間性の問題だろう』

『ああ、遠回しに私の性格が悪いって言ってるのね。でも残念ね』

仁の腰に手を回しながら、菖蒲は口の端をニイッと跳ね上げる。

『あなたの相手は私。だって私の方が、椿よりずっと美しくて男の目を集めるもの。器量のいい嫁が欲しかったんでしょう? 少なくとも、あなたのお祖父様はそれを望んでる』

そう言って、自分のものであると誇示するかのように仁の体に擦り寄ってくる。
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