身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
だが仮に、仁が水無瀬家を許し無償で関係を清算したところで、今後椿は援助をかって出る資産家たちの間をたらい回しにされるだろう。そんな想像が容易にできて背筋がゾッとした。
自分が手もとに置いておけば、少なくとも彼女の尊厳は保たれるだろうか。
まだ学生だった頃のあどけない姿を思い出し胸を痛める。
好きなことに真っ直ぐで純真な女の子だったはずだ。
それが今や、男の前で着物を脱ぎ捨て、暗く沈んだ顔をしている。
――だいたい君も君だ。なぜ自分を安売りする。父親の命令なんかに従うな。君はもっと尊く、大切に扱われるべき女性なのに……
だが、祖父に逆らえず政略結婚させられようとしていた仁が、自分を棚に上げてなぜそんなことを言えようか。
やるせない思いが巡り、むしゃくしゃして苛立ちを覚える。
『期待なんてするなよ。俺は機嫌が悪い。遠慮などしてやれない』
動揺をごまかすように冷徹な言葉で椿を責め立てる。
だが、頭の中ではまったく別のことを考えていた。
姉の影に引きずられ、自信を失くし伏せっている憐れな彼女を救ってやりたい。
『……本当にいいんだな? どうなっても知らないぞ』
その言葉は椿に向けたのか、あるいは自分自身に向けたものか。
頷く椿を、仁は丁寧に、そして大切に抱いてやった。
自分が手もとに置いておけば、少なくとも彼女の尊厳は保たれるだろうか。
まだ学生だった頃のあどけない姿を思い出し胸を痛める。
好きなことに真っ直ぐで純真な女の子だったはずだ。
それが今や、男の前で着物を脱ぎ捨て、暗く沈んだ顔をしている。
――だいたい君も君だ。なぜ自分を安売りする。父親の命令なんかに従うな。君はもっと尊く、大切に扱われるべき女性なのに……
だが、祖父に逆らえず政略結婚させられようとしていた仁が、自分を棚に上げてなぜそんなことを言えようか。
やるせない思いが巡り、むしゃくしゃして苛立ちを覚える。
『期待なんてするなよ。俺は機嫌が悪い。遠慮などしてやれない』
動揺をごまかすように冷徹な言葉で椿を責め立てる。
だが、頭の中ではまったく別のことを考えていた。
姉の影に引きずられ、自信を失くし伏せっている憐れな彼女を救ってやりたい。
『……本当にいいんだな? どうなっても知らないぞ』
その言葉は椿に向けたのか、あるいは自分自身に向けたものか。
頷く椿を、仁は丁寧に、そして大切に抱いてやった。