過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「今案内のものが参りますので、あちらでしばらくお待ち下さい」


としたちの来訪先の部署に連絡を入れた後、ロビーの方を指しながらテンプレートのセリフを口にする。

「え〜、その前に名前教えて〜花里さ〜ん」

「はいはい鳥居さん、あっちで待ちますよ」

拗ねた顔でまだ粘る鳥居さんをとしが引っ張って行く。

ちらっとこちらを振り返ったとしが片手ですまん、のポーズをするから、たぶん鳥居さんの方が先輩なんだろうけど、としも大変だな………そう思いながら苦笑いで首を横に振った。


そのタイミングで渚さんが会議室の片付けから帰って来る。

「ごめんね、来客あったみたいね。大丈夫だった?」

「あ、大丈夫です。専務の取材に来た出版社の方たちでした」

と教えたところへ、

「お疲れ様です、中島さん、花里さん。紬出版の方はどちらですか?」

と相良さんもやって来たので、私はあちらの方たちです、ととしたちの方を指し示す。

相良さんは「ありがとうございます」と私と渚さんに軽く微笑んだ後、としたちの方へ向かって行った。
< 101 / 180 >

この作品をシェア

pagetop