過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「今案内のものが参りますので、あちらでしばらくお待ち下さい」
としたちの来訪先の部署に連絡を入れた後、ロビーの方を指しながらテンプレートのセリフを口にする。
「え〜、その前に名前教えて〜花里さ〜ん」
「はいはい鳥居さん、あっちで待ちますよ」
拗ねた顔でまだ粘る鳥居さんをとしが引っ張って行く。
ちらっとこちらを振り返ったとしが片手ですまん、のポーズをするから、たぶん鳥居さんの方が先輩なんだろうけど、としも大変だな………そう思いながら苦笑いで首を横に振った。
そのタイミングで渚さんが会議室の片付けから帰って来る。
「ごめんね、来客あったみたいね。大丈夫だった?」
「あ、大丈夫です。専務の取材に来た出版社の方たちでした」
と教えたところへ、
「お疲れ様です、中島さん、花里さん。紬出版の方はどちらですか?」
と相良さんもやって来たので、私はあちらの方たちです、ととしたちの方を指し示す。
相良さんは「ありがとうございます」と私と渚さんに軽く微笑んだ後、としたちの方へ向かって行った。