過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

相良さんに先導されて受付の横を通り過ぎる時、鳥居さんは懲りもせずに、「花里さん、またね」なんて軽くウィンクして行くもんだから、としには小突かれ相良さんには一瞬訝しげな視線を向けられ。

でも当の本人はそんなのものともせず飄々として去って行った。


「……羽衣ちゃん!ああいう男には絶対引っかかっちゃちゃダメだからね⁉︎」


それだけで何かを感じ取ったのだろう、鳥居さんの後ろ姿を、まるで逆毛を立てた猫のようにじろりと睨みながら言う渚さんに、

「あはは、それは大丈夫です、ああいうの1番苦手なタイプなので……」

と苦笑いで返す。



それにしてもまさかとしが専務の取材に来るなんて、びっくりだ。


としは紬出版に入社後、女性ファッション誌"Diarncy"(ディアンシー)の編集部に配属されたということは聞いていた。

20代半ばから後半の働く女性が主なターゲット層の雑誌だけど、私もたまに買って読んだことのある雑誌だったから巻末のクレジットにとしの名前を見つけた時は感動したものだ。
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