過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
その雑誌に、専務とうちのチョコレートが載る。
専務は今日取材される相手があのとしだと、気付くだろうか?
相良さんは気づいた様子はなかったけれど、10年以上ぶりだもんなあ。会っただけじゃ分からないか。
専務もクラス会の時一瞬としの方を見たけど、あれがとしだってたぶん気づいてなかったもんな。
またクラス会の日へと思考が飛んでいき、私はふるふると頭を振ってその思考を追い出した。
そして間もなくしてまたやって来た来客に意識を集中させ、テンプレートの笑みを浮かべて、同じくテンプレートのセリフを繰り出す準備をするのだった。
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それから約1時間後。
来客も途切れたのでパソコンで事務作業をしていると、受付の内線が鳴った。
「はい、受付の花里です」
「あ、羽衣ちゃん、専務の取材終わったから、第2会議室の片付けをお願い出来る?」
電話の相手は、おそらく周りにはすでに誰もいないのだろう、仕事中の丁寧な口調ではなく、いつもの砕けた口調の相良さんだった。