過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「はい、わかりました」
「あ、ちなみに次片付けに行く順番ってどっち?」
「私、ですけど……?」
「そう、ちょうど良かった。じゃあ羽衣ちゃん、お願いね」
「はい」
相良さんにはいつだったかうちで一緒に晩ご飯を食べた時、会議室の片付けは渚さんと交互で行っているんだと話したことがあった。
それでそう聞いたのだろう。
渚さんに断りを入れて受付を抜ける。
敷き詰められたスクエアのタイルの上を歩く度にカツカツカツ、とヒールの音が響いて、自然にしゃん、と背筋が伸びる。
毎朝チョコレート色の本社ビルに足を踏み入れる時だとか、外線電話で社名を名乗る時だとか、こうして本社の中を歩いている時もそうだけど、ああ、私本当にあのラピスに勤めてるんだなあとふとした瞬間に実感する。
エレベーターで6階まで上がり、すれ違う社員に挨拶をしながら第2会議室まで向かい、そのドアの前で足を止める。