過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

はじめての、恋の相手

私は大我のお陰で徒歩で通えているけれど、いくつかの路線が乗り入れる最寄駅からは徒歩10分。 

チョコレート色の外壁の7階建てビルが、"ラピス"本社だ。

10月初旬は、まるで夏がぶり返したと思わせるような気温の日もあれば、羽織るものがないと肌寒く感じる日もある。

でも今日はまさに秋らしい陽気の過ごしやすい日。

大我を先に見送り、近所のお家に咲いている金木犀の香りを吸い込みながら会社への道をのんびり歩いて午前8時。

出社してまずは2階にある更衣室へ。

入社研修後私が配属されたのは、総務部所属の受付で。

受付嬢には制服があるから、毎朝ここで着替えてから受付へ向かう。

「あっ、羽衣ちゃんおはよーう!」

自分のロッカーへ向かうと、先に来ていた渚さん
が元気に挨拶してくれる。

「渚さん、おはようございます」

ふんわりとしたショートカットを揺らしながらにこにこ微笑むのは中島 渚(ナカジマ ナギサ)さん。

私の3年先輩で、くりくりした瞳が印象的な、目鼻立ちのくっきりした美人さん。

同じ受付担当で、右も左もわからない私に一から懇切丁寧に受付業務のことを教えてくれた人。

渚さんのお陰で、私はなんとか今のところ危なげなく業務を全う出来ている。
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