シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 上気した頬にとろけそうな眼差し。

 それだけで誘惑されているような気分になるのはおかしいだろうか?

 引き締まった上半身は男らしい色気がダダ洩れだし、濡れ髪はいつも以上に彼の艶っぽさを増幅させているようにしか見えない。


 言葉も出せず顔を赤くさせているわたしに、ギンはゆっくり近づいてくる。

「そんなに見つめんなよ」

 フッと笑いながらそう言った彼は、かがんでその(あで)やかな唇をわたしの耳元に寄せた。

「シたくなるだろ?」

「っ!?」

 何を!? と言いたくなったけれど言えなかった。

 答えを聞いても多分どうしたらいいか分からなくなるだけだから。


「あ……う……」

 はくはくと口を開け閉めするだけのわたしに、ギンはさらに囁く。

「リビングで待ってろ。一緒にベッド行こうな?」

「っ!?」

 甘い吐息と低く震える声。

 それらにはやっぱり魅了の魔法でも掛かってるんじゃないだろうか?


 抱くのはわたしがいいと言ってからだよね、とか。

 話があるから待ってろって言ったんじゃなかったの? とか。


 叫びたい事は頭に浮かんでくるのに、ギンの魅了する力はそんな言葉たちも溶かしていく。
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