シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 本当はたくさん食べるだろうし安いお肉にしようと思ったんだけど……。

「義姉さん、兄さんはあの柚木家の人間だよ? そんな安い肉じゃあ口に合わないんじゃないかな?」

 という眞白の言葉に、確かにと思ってお高い肉にしてしまった。


 人様のお金でいいのかな? と思わないでもなかったけど、「義姉さんの歓迎の意味もあるし」とか「食べるのはほとんど他の皆だし」とか言われて丸め込まれてしまった気がする。

 結局のところ、眞白が食べたかっただけじゃ無いの?

 まあ、わたしも食べてみたかったから人のことは言えないんだけど……。


 何はともあれ、そんな感じでテンションを上げた状態で帰路についたからかそれ以降は重いと文句を言う人はいなかった。

***

 シェアハウスに帰ってくると、そのまま3人に手伝って貰って食材や調味料、足りなかった食器などを片付ける。

 料理する人がいないのに何故か調理器具だけは充実していたので買い足す必要がなかったのは助かったけど。


 一通り終えて一旦リビングへ行くと、ギンと颯介さんは留守なのかいなくて、あいも変わらず三つ子がPC前でカタカタキーボードを打っていた。

「あなたたちちゃんと休んでるの? その場所から動いた所、朝食のとき以外に見たこと無いんだけど」

 呆れて文句を言うと、3人はこちらを見もせず指を動かしながら口を開いた。
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