シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
どうして柚木家の人間が暴走族とかしてるのかと思ってたけど、まさかそんなつもりはなかったなんてオチだとは思わなかった。
言葉が出てこないわたしを放って、3人はさらに話し続ける。
「そうなんですよ。そうやって引き抜く過程でケンカして奪ったりしたから、何か恨み買っちゃったみたいだし……」
「そりゃあ恨みも買うだろ。ギンさんの強さに憧れて、三つ子以外の奴らもついてきちまったんだから」
「一気に人数が減ってあそこのチームもう崩壊寸前らしいし」
伊刈くんが皮肉気に笑い、岸本くんがシシシ、とおかしそうに笑った。
ギン……あなた本当にこの7年で何があったの?
しかも眞白はそれを把握してたっぽいし……。
何だか聞いてるだけでクラクラしてきた。
「それでついてきちまった奴らがいるから、仕方なく暴走族名乗ったって言ってたっけ」
思い出すようにそう話す伊刈くんに、眞白が「あ、じゃあ」と話しかける。
「族名《黒銀》にしたの、兄さんが面倒くさがったからテキトーに髪の色から決めたって話も本当ですか?」
それに答えたのは岸本くんだ。
「そう、マジな話。何でもいいっつったギンさんに、颯介さんが『じゃあお前の髪の色から取って《黒銀》な』ってすぐ決めちゃったんだよ」
「……」
うん……何となく簡単な族名だなぁとは思ってたけど……。
いいのかそれで、と内心突っ込んでいたら、玄関のドアが開く音と「ただいまー」という颯介さんの声が聞こえた。