シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「あ、２人とも帰って来たのかな？」

　呟いて、何となく出迎えに行ってみた。

　横開きのドアを開けて「おかえりなさい」と口にすると、またリンゴを丸かじりしているギンとわたしを見てパチパチと瞬きしている颯介さんがいた。


　リンゴを咀嚼し飲み込んでいるギンの横で、颯介さんはニッと笑う。

「うん、ただいまユキちゃん。いやぁ、可愛い女の子の出迎えがあるっていいなぁ」

　そう言って彼はわたしの頭を軽くポン、と叩きながら横をすり抜けていった。


「ギンも、おかえりなさい」

　ギンからはまだ“ただいま”が聞こえてこなかったから、向き直ってもう一度言うと……。

　色っぽく指で唇を拭ったギンはそのまま流れるような仕草でわたしを抱きしめた。

「っ！　え？」

「……ただいま、雪華」

　すぐ近くで囁かれた声は、わたしの心を溶かしそうなほど甘くて一気に鼓動が早くなる。

　ドキドキしすぎて言葉を発することが出来ないわたしに、ギンは「目、閉じろ」と囁く。


「え？」

　何で？　と疑問に思ったわたしはすぐにその指示に従えなかった。

　するとギンはわたしの頭に腕を回すようにして、その大きな手で目隠しをする。

　そしてすぐに柔らかいものが口をふさいだ。
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