むり、とまんない。


一瞬目を見開いたのが、画面のはしで見えた。

たぶん、私がいっしょに行くって言うと思わなかったんだと思う。

でも……。

遥のことを知るチャンス、だから。

『胡桃とはなれて、めちゃくちゃに荒れてたんだよ』

小さいころからずっといっしょにいた遥。


でも心の声のことがあって、はなれてる間のことを私はなにもしらない。


あのときほんとうは私をどう思っていたのか。

なにを考えていたのか。


もしまた昔みたいに戻れるなら、話がしたい。

元の関係に戻りたい。


楽しかったお互いの部屋を行き来するような仲のいい関係に。

遥のこと、もっとしりたい。

そう、思ったから。


「ご、ごめん……またせた、かな」

「ぜんぜん。
体調、わるいとかじゃないよな」
『胡桃のことならどれだけでも待てるよ、俺』

「っ……」


ドアを開けて飛び込んで来たのはほっと息をついた、安心するかのような表情と。


「熱はない、けど……なんか疲れた顔してる」

「っ、あっ…ぅ、こ、これはその……」


遥のせい、だよ……。

体調を心配してくれるのはありがたい、けど。

なにも顔を近づけて、頬をさわらなくてもっ……!!
 

『なに、照れてる?くっそかわいい』


だからこの距離の『カワイイ』はやめてって!

見ていられなくて思わず顔を逸らしたけれど。


『「心配だから。
俺のこと見て、胡桃」』

「っ……!!」


もう一度、今度はスっとあごを持ち上げられた。


マスクをしているからわからない、けれど。

絡まる視線も。

するりと頬をなでた手も。
伝わる体温も。

あまいあまい心の声も。

ぜんぶが『カワイイ』って、叫んでるみたいで。


「いくか」

「うん……」


こんなに甘い遥、しらない。

ドキドキが、とまることをしらない。
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