むり、とまんない。
***


「……」

「……」


む、無言……。

それからスーパーまで歩きだしたのはいいものの。

心の声が聞こえないきょりである、1.5メートルうしろをついていく私。

だから静かなのは当たり前なわけで。


今日は朝からずっと遥の声が頭の中でしていたから変な感じ。


い、今までふたりのときって、な、なに話してたっけ……!?

なんて変に緊張しちゃって、うまく言葉がでてこない。


なによりも、いくら住宅街とはいえ、もしかしたら遥のファンの子に気づかれるかもしれない。

勘違いされるかもしれない。


そう思ったらうしろを歩くしかできなくて。


遥、身長のびたな……。

艶のある黒髪が夕日に照らされてますますキラキラしてる。


中3で、既に180近くあった身長はますますのびて。

服も、私が見たことないくらい、おしゃれなやつを着てる。


私はラフなジーンズと、Tシャツの上にカーディガンを羽織っただけ。


しりたいって思ったのは自分なのに、物理的にも心も遠く感じて……。


「あのさ」

「っ、は、はいっ……!」

「ふっ、朝も思ったけど、なんで敬語?」


立ち止まって振り返ったその目がきゅうっと細められた。

ずっと遥のうしろ姿を見ていて、遥のことを考えていたからです、なんて言えない……。


「ふつうに話して」

「え……?」

「きょり感じるの、めちゃくちゃやだ」

え……。

ま、まあたしかに昔はふつうだったけど、今は前とは関係も変わって……。


「それに……なんでそんなうしろ歩くの」

「えっ」

「授業中も隣の席なのに、こっち見ようとしないし、なんで。俺は四六時中胡桃のそばにいたいのに」
< 87 / 346 >

この作品をシェア

pagetop