むり、とまんない。


んん?

まってまってまって。


「あと。
杏とばっかり」

「え」


「HR終わったあと、杏のところ行ってたんだろ?
俺が胡桃に言った買い物のこと、杏には話してない。話なら、杏じゃなくて、俺じゃだめなの」


一歩。

また一歩。


近づこうとする度に私の足もうしろへ動く。


「今もほら、離れようとする」

「こ、これは……」


「俺が女たちに囲まれてるから?
俺は顔しか見てないやつなんかどうでもいい。胡桃がいい」


向けてくる視線の中に、なにか秘められた熱みたいなものを感じて見ていられない。

なにやらとんでもないことを言われてることだけはわかって、今でこんななのに、心の声まで聞いたらぜったいに反応しちゃうって思ったから。


「ゆ、弓削くんの、思い違いじゃ……」

「……なにそれ」

「はっ?」


一気に声のトーンが落ちた気がした。



「遥」

「え」


「昔は呼んでくれてたじゃん、遥って。なんでそうなってんの」

「あっ、ちょっ、弓削く……!?」
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