その星、輝きません!
 「きゃあーーー。最高!」

 パラセーリングにバナナボード。フライボートと言うものまでやってみた。
 楽しすぎる。


「うわーー」

 悲鳴とともに、隣に座っていた彼の姿が消えた。バナナボードの上から海を覗くと、ライフジャケットを来た彼が、ぷかぷかと浮いていた。乗る前までば、こんな子供だましの乗りもに落ちる訳かないと、平然としていた姿を思い出して、思わず噴き出した。


「落ちる訳ないんじゃなかったんですか?」


 私は、ばななボートの上から彼に手を差し出した。彼は、私の手をぎゅっと掴み、ボートの上に上がってきた。


「不意打ちだったんだ。あの男、下手な操縦しやがって」

 彼は、ボートを操縦する若者を睨んだ。

 いやいや、こういう遊びですから……


「もう、落ちないぞ!」

 ガシッとバーをにぎって構えている、彼の姿を見て声を出て笑ってしまった。
 彼も、一緒に笑っていた。

 もちろん、チケットは全て使い切った。



 水着のまま、プールバーのカウンターの前に腰を下ろした。

「部屋のプールで飲めばいいだろ?」

「どうしてですか? せっかくだからプールバーで飲みたいですよ」


 彼の小さなため息と同時に、肩にパーカーがかけられた。いらないと言ったのに、水着と一緒に買ってしまったものだ。

 そして、ピタリと私の隣りに座った。


「楽しいか?」

「そりゃもう。こんな贅沢したことないですからね」


「贅沢か…… 仕事を忘れて、楽しむ事もないからな…… 確かに贅沢だな……」


 彼は一人で納得しているようだが、私からしてみれば、こんな贅沢は一生ないだろう。私はいったいいくら支払わなければならないのか? 今、考えても気分が落ちるだけだ。現実逃避しよう。


 カウンターに置かれた、カクテルを口に運んだ。最高に美味しい!
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