その星、輝きません!
 楽しい時間はあっという間というが、まさしくその通りだ。あっという間に、空がオレンジ色に染まり出した。

 さっき買った黒のワンピースに着替え、部屋のテラスから海に沈んでいく夕日を眺めた。思ってもみない驚く事ばかりの一日になってしまったが、ただただ、目の前の事を楽しむ時間も悪くなかった。

 人生、何が起きるか分からない。起きた事を、どう受け止めるかは自分で決める事だ。


「そろそろ、食事に行こう」

 彼の声に振り向いた。


「ええ」


 テラスに一歩足を踏み入れた彼は、私を見るとそのまま停止してしまった。なんか驚く事でもあったのだろうか?


 ゆっくりと彼の元へと歩いた。
 彼は、何も言わずにじっとこちらを見ている。


「どうかしましたか?」

 彼の顔を覗きこむ。彼の目が、すっと逸らされた。


「い、いや」

「それなら、いきましょうか?」

「ああ……」


 彼は、ふっと顔を緩めると、ドアの方へ向かって歩きだした。
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