体育祭(こいまつり)
 その日解散になり、近くの宿泊先の寺院に向かうころには自分の影が長く伸びていた。

「見てた? 俺、八番! すごくない?」

 健二が声をかけてきた。

「すごかった、すごかった」

 悠香が笑顔で健二を褒めた。

「……。頑張ったね」

 私もそう口にした。

「誰のため? ぐらいつっこめよ」

 健二は笑ったけど、目は笑っていなかった。鋭いとさえいえるような視線を私に送っていた。

「聞けないよー、ねえ、りり」
「う、うん」
「……まあ、うまくいくように祈ってて」

 そう言って去っていった健二の表情は分からなかった。


 健二、本当に私にキスしようとするのかな……。

 男子の真剣な視線があんなに怖いなんて思わなかった。視線って、凄い力なんだ……。

 私は今更、自分が徳山君にしていた行為を思い出して、申し訳ない気持ちで一杯になった。信じられないことだが、もう、元彼を思い出すスペースが私の頭にはなかった。

 どうしよう……。 

 私は悠香と食堂とされる場所に向かった。すると、ちょうど食事をする学生たちで賑わっていた。
 徳山君もその中にいた。一瞬目が合う。けれど、徳山君はすぐに目を伏せてしまった。 

「……」

 そんなとき、また刺すような視線を感じ、私は振り返った。

 そこには健二がいた。目を逸らしたいのだが、健二の瞳がそれを許さない。

「……」

 息ができない。
 ……。
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