体育祭(こいまつり)
「やっぱりわからんな、何を表現しているのか」

 ブロック席に戻ってきた私たちに健二が声をかけてきた。

「失礼ね、がんばったのに」
「うん。それは伝わった。みんなすっげー真剣。そして、華があった」

 にっと笑って言った、健二の言葉に悠香と私は同じようににっと笑った。

「そうそう、男子は怖い競技ばかりだからね。女子が華を添えないと」

 悠香が言うと、

「ブルマだったら、なおいいかもしれん」

 と遠い目をして健二は言い、悠香が、

「すけべ!」

 と健二を小突いた。
 私は、ふと気づいた。二人はこんなに仲がよかったんだ。

「……」

 小学校からずっと一緒の健二。中学から仲良しになった悠香。そっか。自然と一緒にいる時間があったからだよね。

「りり?」

 健二が怪訝そうな顔をして私を見た。

「お昼だね。お弁当食べよう!」

 私は悠香の手を引っ張った。

「りり?」
「お昼の後は応援コンテストだよ! しっかり食べないとね」

 私たちは弁当を配っている場所に歩く。
 途中で徳山君の姿が見えた。
 私の視線に気付いてか、こちらを向いた。

 目が合う。徳山君は何か言いたそうな顔をしたけれど、でも、思い直すように視線をそらしてしまった。

 どうしていいかわからない。でも、徳山君の視線には健二のような力はなかった。

「ちょっと待ってて」

 悠香は私を置いて、二人分の弁当を手に戻ってきた。

「一緒に食べようって」

 そして、後ろを指差して言った。同じブロックの女子三人が手を振っていた。

「これ、男子と同じサイズだよね。こんなに入るかな」
「だね。多すぎ」
「次、応コンだねー」
「緊張する~」

 応援コンテストは、パネル操作と応援歌の音量で審査が決まる。

 男子も女子も、この応援コンテストのためにかなり時間を割いてきた。大人数いるとはいえ、一人でもパネル操作を間違えば、結構目立つことを、一年生の体育祭後、ビデオを見たときに学んでいた。

「結構恥ずかしいよね、失敗したら」
「ね」

 練習のときに間違わなくても、本番で間違ったら終わりなのが結構プレッシャーになる。
 タンブリングもダンスもだが、応援コンテストも、やっているとき自分たちがどうなっているか分からないというのは緊張する。

 タンブリングは女子は見れる。ダンスは男子は見れる。
 
 でも、応援コンテストは誰も見れない。どんな字や絵が出されているのか、教えられないまま競技が終わる。後で、体育祭のビデオを見せてもらえるのだが、男子は自分たちのタンブリングの出来に、女子は自分たちのダンスの出来に、そして、みんな応援コンテストのパネルの出来を楽しみに見る。競技中の緊張感の消えた顔で。
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