俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】
息巻く私に、天澤さんは呆れたような笑いをふっとこぼした。その笑みを見られただけで、少し緊張が解けた気がした。
運ばれてきた前菜のサラダやアヒージョをいただきながら、航務課も今日は台風で大変だったという話を交えつつ天澤さんへの賞賛を贈る。彼はいたって平静だ。
「台風のあとだし、ウインドシアは予測していたから対処にはそれほど手間取らなかった。あれくらいできなきゃ機長にはなれないからな」
さすがの冷静さだと感心するも、彼は伏し目がちになって「でも」と続ける。
「毎回緊張はするし、何百人もの命を背負ってると思うと焦りそうになる。今日みたいにゴーアラウンドしたときは、一度空からの景色を見て気持ちを落ち着かせると、次はうまくいくと思えるんだ」
……初めて聞いた、パイロットとしての彼の本音。やや憂いを帯びた表情は、強気で冷徹な普段とは違って人間らしさがかいま見える。
熟成肉のステーキが運ばれてきて、ソムリエが厳選したという赤ワインが注がれても、私はそれより彼の表情に見入ってしまっていた。