婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 目と目が合って恥ずかしくなりうつむき、アイスコーヒーにミルクとガムシロップを入れる作業に集中しているフリをする。

「亜嵐、レストランの予約はしてくれているわよね?」

 和歌子おばあ様の言葉にハッとなって、顔を上げる。

「もちろん三人で予約済みだよ」

 それって、今日の夕食の話かな……?

「おばあ様、ごちそうさまでした。私はこれでおいとまさせていただきます」

「一葉ちゃんったら、今亜嵐が言ったでしょう? 予約をしているって。政美ちゃんにはお夕食を一緒に食べたらお返ししますって言ってあるの」

「おばあちゃんが……」

 祖母が了承済みならば、早く帰宅しなくても平気よね。でも、亜嵐さんも一緒だなんて、緊張しちゃうな。

「ええ。それにまだお話があるのよ」

「あ、そうでした。お伺いします。おばあちゃんに伝えることでしょうか……?」

 話の内容に予想がつかず、戸惑いながらも小さく首をかしげて尋ねる。

「一葉ちゃん、驚かないで聞いてほしいの」

 和歌子おばあ様にそう言って切り出され、余計に心配になってしまう。

「遠い昔のことね。最初は私と政美ちゃんに子どもが生まれ、成長したら、結婚をさせたいと私と政美ちゃんは約束をしていたの。当時、有名な作家さんの小説にそういうのがあって、ロマンチックよねと」

 私たちの話に亜嵐さんは退屈ではないだろうかと視線を向けると、アイスコーヒーを飲みながらしっかり聞いているようだ。

「でもね、残念ながら私には男の子がひとり、政美ちゃんの方も男の子がふたりだったの」

 和歌子おばあ様は心の底から残念そうにため息を漏らす。

 当時の気持ちを思い出したみたいに見える。

「それでね? 次は孫ができたら、ちょうど年齢的にも合って双方がよければ結婚させたいわねと政美ちゃんと約束をしたの。ねえ、一葉ちゃん。亜嵐が結婚相手だったら嫌かしら?」

 突然予想もしなかった驚く話に、頭の中が真っ白になった。返事ができない私に、和歌子おばあ様がやんわりと微笑みを浮かべる。

「一葉ちゃん?」

 我に返って首を左右に何度も振る。

「私に亜嵐さんはもったいないです」

 急に結婚相手にどうだと言われて、ますます亜嵐さんを見られなくてアイスコーヒーの氷を意味もなく数える。

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