婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
「そんなことはないわ。先日、一葉ちゃんとお話しして、亜嵐にピッタリだと思ったの。年上を敬い、素直で、頭の回転も速くて、おいしそうに食べる一葉ちゃんは理想の孫のお嫁さんだとね」

 おいしそうに食べるが、食い気の塊みたいで今度は気をつけなきゃと自分を戒める。

「おばあ様、俺に話をさせてもらっていいかな?」

「ええ。当事者ですものね」

「一葉ちゃん、まずは自己紹介をするよ。伊集院亜嵐。二十八歳だ。君とは十歳差になるから、おじさんに見えるかもしれないな」

「え? そんな、おじさんだなんて!」

 思わず瞬時に反応する私に、亜嵐さんは口もとを緩ませる。

「よかった。職業は、イタリアの家具メーカー、フォンターナ・モビーレの日本支社長をしている。本社はミラノだ。代々続く家業だよ」

 二十八歳の若さで日本支社長? ますます私にもったいない男性だわ。

「趣味は時間ができるとドライブくらいかな。読書は好きだ。遺跡なんかもね」

「亜嵐は仕事中毒なのよ。だから、一葉ちゃんのようなかわいい女性がそばにいてくれたら、少しは仕事以外に目を向けるんじゃないかと思うの」

「……お話を聞いていたら、ますますなんのとりえもない大学生の私は亜嵐さんにはふさわしくないかと」

 亜嵐さんが自己紹介までするということは、私が相手でもかまわないと思っている……? こんなにかっこよくて支社長という立場なら、彼女くらいいそうだけど。

「おばあ様、あと二十分でレストランの予約の時間です。ゆっくり食べながら一葉ちゃんを説得してみては?」

「もうそんな時間なのね。そうね、お出かけしましょう。一葉ちゃん、支度をしてくるから五分ほど待ってね」

 和歌子おばあ様はソファから立ち上がり、リビングを出ていった。

 亜嵐さんとふたりきりになってしまい気まずい。

「あ、あの。食器をキッチンに運んでもいいですか?」

「お客様にそんなことはさせられないが、君は気まずそうだからお願いするとしよう」

 私の気持ちはすっかり見通されているようだ。

 落ち着かない気分でソファからすっくと立つと、食器を両手に持ってキッチンへ運ぶ。トレイが見あたらなかったので一度では持っていけず戻ろうとしたところで、こちらへやって来る亜嵐さんがいた。残りのお皿が彼の手にあった。

「ありがとうございます」

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