婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 亜嵐さんを待つ中、朗報があった。お兄様が昏睡から目を覚ましたのだ。

 だが長い時間寝たきりだったので、歩けるようになるかどうか、医師にも確信はないらしい。

 寂しい時間を過ごすのは仕方ないと自分に言い聞かせて月日は過ぎていく。

 十月の半ば、待ちに待った亜嵐さんが帰国すると連絡があった。私は飛び上がらんばかりに喜び、数日後の彼の帰国日を待った。

 大学の単位は取り終えているので、亜嵐さんの仕事の邪魔にならない程度に会えれば幸せだ。

 亜嵐さんの帰国当日、前回のように運転手に送らせると、など彼に気遣わせたくなくて羽田空港へは迎えにいかなかった。

 長期間日本支社を留守にしていたので、仕事は山ほどあるだろう。

 もう到着した頃かな……。

 亜嵐さんが帰国して車に乗った頃を見計らって電話をしようとソワソワしている。

 三十分ほど経ち、そろそろと思ったところへ亜嵐さんから電話が入る。

「おかえりなさい、亜嵐さん」

《ただいま。会社に向かっているところだ》

 彼の魅力的な声が耳をくすぐる。

「うん、おつかれさまです。体調面に気をつけてくださいね」

《ありがとう。次の土曜日は一葉とゆっくりしたい》

 亜嵐さんは忙しいのだから私から会う話をしないでいようと思った矢先、彼の言葉に笑みがこぼれる。

「じゃあ、私が食事を作ってもいいですか?」

《一葉の手料理か。楽しみにしている》

「そ、そんなに期待しないでくださいね」

 多大な期待に沿えるものを作れるかわからない。

 そう話すと亜嵐さんは笑い、車が会社近くになるまで他愛のない会話が続いた。

 その週の土曜日、食材の買い物を済ませてから亜嵐さんの自宅へ行くつもりだったが、『彼も一緒にスーパーへ行くのもデートだよ』と言われ、わが家に迎えにきてくれた。

 十時の待ち合わせ時間に外で亜嵐さんを待っていると、ピッタリ門扉の手前に車が止められ、彼が運転席から出てきた。

「一葉ちゃん、おばあ様はいる?」

「はい。いますが……?」

 キョトンとなって首をかしげる私に、亜嵐さんは微笑みを浮かべる。

「ずいぶん会っていないから挨拶をしたい。ご両親は仕事中だろう?」

「はい。おばあちゃん、亜嵐さんに会ったら喜びます」

 亜嵐さんは後部座席のドアを開けて、たくさんのショッパーバッグを手にした。

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