婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
「あっ、ああ……ん」

「一葉が恋しかった」

 甘い声しか出ない唇を塞がれる。口腔内を探索され、彼の手は胸から下腹部へ下りていく。

 亜嵐さんの触れ方はゆったりとして性急なところなんてないが、その手に翻弄されている私の脚はがくがくと震え、彼のなめらかな肩にしがみつく。

「んぁあ……あ、亜嵐さんっ、やぁ……」

 下腹部をもてあそばれる手から逃れようとすると、私の片脚が持ち上げられた。

 直後につながる体。

 揺さぶられ激しく求められて、亜嵐さんの眉が寄せられ美麗な顔が少し苦しげにゆがむ。

「ん、一葉……」

「あ……らんさ、んっ……あああっ……」

 唇が塞がれ、舌を絡ませ合う深いキス。電流が走ったような感覚に襲われ、自ら腰を動かして乱れる。

 湯気が立ち込める中で、自分の体が自分のものでないようでふわふわとしてきて、全身が甘く痺(しび)れていった。

 その日から亜嵐さんは二週間ほど日本に滞在のして亜嵐さんは仕事をしつつ、大学の単位を取り終えて自由な私は彼と濃密で甘い時間を過ごした。

 そして再び、亜嵐さんは日本を離れ、イタリアの地へ向かった。

 亜嵐さんが離れて約二カ月が経とうとしている十二月。

 夕食後、キッチンで後片づけをしてから部屋に戻ってきた。

 はぁ~食べすぎちゃった……。

 亜嵐さんの留守中のうちにダイエットして、次に会ったとき『綺麗になったね』って言われたいのに、食欲が前にも増して旺盛なんだから……。

 もう一度ため息を漏らし、イタリア語の教科書を前にまずは亜嵐さんの顔を見よう。と

スマホの画像フォルダを開き、く。

 しばらく亜嵐さんと撮った写真を見ていると、驚くことに花音さんから電話がかかってきた。それまでにもときどき【元気にしている?】などメッセージをもらってはいたが、電話だったのでびっくりした。

 彼女はピアニストの夢をあきらめて、フォンターナ・モビーレに広報担当として入社したと亜嵐さんから聞いていた。

「花音さん、一葉です」

《一葉さん、こんにちは》

 声が沈んでいるように聞こえる。

「こんにちは。花音さん、お元気ですか?」

《ええ。突然の電話で驚いたでしょう? 実は一葉さんの耳に入れなきゃと思って電話したの》

「私の耳に入れなければ……?」

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