婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 花音さんがかけてきたということは、亜嵐さんの件に違いない。

「話してください」

 なにを言われるのか心臓がバクバクしてきたが、しっかり聞かなくてはならないと思った。

 緊張感に襲われて、唾をゴクリと飲み込む。

《おじい様が、フェラーラの有力者の娘と亜嵐を結婚させようとしているの》

「え!?」

 今、〝結婚〟って言った? 私の聞き間違い……?

《一葉さんと婚約しているのはおじい様だって承知しているわ。でも城には維持費がとてもかかるの。本来ならば有力者の娘、カトリーヌと豪を結婚させる予定だったの》

 まさか、亜嵐さんはお兄様の代わりに?

《でも、豪の今の状態でとてもじゃないけど結婚は……。それに子どもを作る能力が失われたと医師も言っているから、破談は間違いないわ。それで、亜嵐を次期当主にって》

「……亜嵐さんは?」

 バクバクしていた心臓は嫌な音に代わって、ギュッと痛みを覚えた。

 右手を胸で抑えて、頭の中全体にぐわんぐわんと音が鳴り響く。

 意識が飛びそうなところを大きく深呼吸をして、なんとか保つ。

《亜嵐が承知するわけがないわ。でも、カトリーヌは以前から豪より亜嵐が気に入っていたから、頻繁に会社へ顔を出しているの》

「亜嵐さんが承知しないのなら、私は信じます」

《そうもいかないわ。以前私が言ったでしょう? 亜嵐は今までも家族のために自分を押し殺して生きてきたの。城の存続を盾に迫られたら……》

 そうだった……。亜嵐さんは自由に生きてきたお兄様とは違って、大学を卒業後フォンターナ・モビーレや家族に心血を注いできたのだ。

《もう大学は冬休みでしょう? 一度こちらに来て亜嵐と話をしたらどうかなと思って。もちろん私は一葉さんの味方よ》

「花音さん……。少し考えさせてください」

 心臓が暴れすぎたのか、気分が悪くなってきた。

《ええ。もちろんよ。じゃあ、よく考えてね。亜嵐を愛しているのなら離しちゃダメよ。ちなみに今した話は亜嵐には内緒にしてほしいの。勝手に言ったと知られたらまずいわ》

「ありがとうございます」

 花音さんとの電話を終わらせて、ベッドに倒れ込む。

 私、どうすればいいの……?

 なかなか寝つけない夜を過ごし、ながらなんとか睡眠に逃げたが、三時間くらいで目を覚ましてしまった。

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