冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 紅茶とケーキが似合いそうな、品のいい大理石のリビングテーブルの上に、沙良は缶ビールをどんと置いた。

「さ、まずは乾杯しようか」

 蝶子と真琴は顔を見合わせる。まだ昼の十五時だし、仕事を手伝いにきたわけで、初っ端からビールをすすめられるとは思ってもいなかった。

「あ、もしかして焼酎派? 焼酎はあるけど、ワインとかカクテルとかの小洒落た酒はないよ」

 鷹揚に笑う沙良は、居酒屋の気さくな店員さんといった雰囲気だ。蝶子の持っていた吉永沙良のイメージとはかけ離れすぎていて、唖然とするばかりだ。
 適応能力の高い真琴はあっさりと気持ちを切り替えたようで、「じゃ、遠慮なく」と言いながらビールのプルタブを引く。

「お、付き合いいいねぇ。名前は」
「庄司真琴です」

 沙良の視線に促されて、蝶子も自己紹介をする。

「――観月蝶子と申します」

 沙良はにやけ顔で「うんうん」とうなずいた。

「真琴ちゃんと蝶子ちゃんね。いや、羽柴先生に頼んで正解だったな~。どうせなら若くてかわいい子がいいと思ってたんだよね」
(うぅ、吉永先生のイメージがぁ)

 ガラガラと音を立てて、淑やかな才女の像が崩れていく。

「とりあえず、今日は仕事はいいからさ。楽しく飲んで仲良くなろうよ」

 沙良はグビグビと爽快にビールを喉に流しこんだ。
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