冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 身体を起こす気力はなく、蝶子は瞳だけを動かして状況を把握しようとした。晴臣のマンションではないし、寝ているベッドもいつもと違って硬くて寝心地が悪い。

「ここは?」

 少しかすれた声で蝶子が聞くと、晴臣が答える。

「うちの病院だ」
「晴臣さんの勤務先……」

 よく考えてみれば、蝶子が有島病院を訪れるのは初めてのことだ。もっとも、今は患者の立場なので訪れるという表現は適切ではないだろうが。彼の職場だと思うと、なんだかドキドキして落ち着かない気持ちになる。

「ここは産婦人科だから、俺の職場と紹介するのは少し違うかもしれないがな」

 彼の所属は外科だ。だが、今気にするべきところはそこではない。

「――産婦人科? どうして?」

 体調不良でまずかかるのは内科が一般的じゃないだろうか、部屋が空いていなかったのか。きょとんとしている蝶子に晴臣は優しい笑みを浮かべる。

「このところずっと顔色が悪いし心配していたんだが、もしかしたらつわりじゃないかと思って。検査してもらわないか?」
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