冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 ゆっくりと告げられた彼の言葉は想定外すぎて、蝶子はうろたえてしまった。

(つ、つわりって……妊娠ってことよね。そんなことあるわけ……いや、絶対ないとは言い切れないだろうけど)

 晴臣に呼ばれてやって来た看護師に案内され、混乱状態のままに蝶子は検査を受けた。そして――。

「晴臣さん、戻りました」

 彼らしくない、落ち着かない様子で部屋を歩き回っている晴臣に蝶子は声をかける。

「どうだった?」

 声も普段の晴臣からは想像もできないほど焦った調子だ。蝶子は大きく深呼吸をして、それでもちっともおさまらない胸のドキドキを感じながら彼に告げる。

「妊娠六週、だそうです。なんだか信じられないんですけど」

 照れたように笑う蝶子の身体が、温かいものに包まれる。ぎゅっと蝶子を抱き締める晴臣の腕も歓喜に震えている。

「そうか。自分で想像していたより何倍もうれしくて、今ちょっと戸惑っている」

 晴臣のストレートな喜びの声に、蝶子もようやく実感が湧いてきた。

(赤ちゃん……晴臣さんと私の……)

 晴臣は蝶子の頬を両手で優しく包み込むと、こつんと額を合わせて言う。

「身体を大切にしてくれよ」
「はい」
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