冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「ダメではないよ」

 晴臣は少しあきれたようにふっと笑う。

「ただ、シェイクスピアと翻訳の仕事には心底嫉妬する。君をそんなに夢中にさせられるなんて」
「晴臣さんにも夢中です!」

 真顔で言ってしまってから、蝶子は急に恥ずかしさを覚えた。彼はきっと冗談めかして言っただけなのに。

(でも、本当なんだもん。今まで文学にしか興味のなかった私が、彼にはこんなにも……)

 晴臣の瞳が妖しく輝く。彼の長い指が蝶子の顎をすくい引き寄せる。

「それはうれしいことを言ってくれるな。けど、君は知らないだろう」

『なにを?』という蝶子の問いは彼のキスに遮られてしまった。熱い舌が歯列をなぞり、蝶子の情欲を誘うように口内を動き回る。

「んっ、はぁ」

 唇が離れるころには、蝶子の瞳は潤み呼吸は乱れきっていた。晴臣は悪戯っぽい笑みで耳打ちする。

「俺のほうが何倍も君に夢中なんだ」
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