冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 甘い時間を存分に楽しんだあとで、彼は言う。

「それから、結婚は君の卒業を待ってからと思っていたが、こうなった以上は早めに婚姻届けを出したほうがいいかと思うんだが」
「そうですよね、たしかに……」

 産婦人科の問診表には既婚か未婚かを記載する項目があったし、もし今蝶子になにかあって入院となった場合なども考えると、正式に夫婦となっていたほうが安心だ。

「卒業を待つ必要はないです。院生は在学中に結婚する人も珍しくはないですし」

 蝶子の出産予定日は来年二月だ。卒業は一年遅れてしまうかもしれないが、それでもいいと蝶子は思っている。恩師の羽柴にも事情を説明済みだ。

「では、俺の両親とは近いうちに食事をしよう」

 晴臣の両親はなにも問題はない。彼の母親である百合は蝶子を歓迎してくれているし関係は良好だ。問題は……蝶子の家だ。晴臣は口には出さなかったがそれを心配していることは十分に伝わってきた。

「観月の家には」

 蝶子の言葉にかぶせて晴臣は言う。覚悟を決めたような声だった。

「やっぱり俺が話をしてくる。大事な時期の君をあの家に行かせるのは心配だ」

 晴臣の優しさはとてもありがたいが、蝶子は少し迷ったすえに首を横に振る。

「ありがとうございます。でも、自分で話をしてきます。いつまでも晴臣さんに甘えてばかりいられないから」

 それでもまだ心配そうにしている彼に、蝶子はにっこりとほほ笑んだ。
< 130 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop