冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「すぐに紀香さんと七緒ちゃんがやってきました」
公平と紀香は最初こそ仲がよかったように見えたが、数年もすると仮面夫婦になった。公平は紀香の言いなりではあったが、外には愛人がいるようで彼女を大切にしているとは言い難い。実際、紀香のいない場で『あの女と再婚したのは実家が金持ちだからだ』と毒づいていたこともあった。
晴臣は蝶子を見据えて言う。
「君のお母さんはそんなことをするような人間だったか?」
蝶子は唇をかみ、ふるふると首を横に振る。小夜子は美しいが控えめな女性だった。洋服もバッグも何年も同じものを使い続けるタイプで金遣いが荒いようなところはまったくなかった。
「会社の人に聞いてみたこともあったんです。でも、みんな口をつぐんでしまって……」
「まぁ、お母さんの横領が真実でもそうでなくても、社員としてはうかつに話せない内容だな」
「はい。なので、真相はわからないままで。父は当然その話をしたがりませんし」
「なるほど、事情は理解した。でも、俺が言えることはさっきと同じだ。君が望むならできる援助はする。蝶子が自分で決めろ」
実家との関係をどうしたいのか、それは蝶子自身の決めること。晴臣はそう言いたいのだろう。彼は続ける。
「ただ、ひとつだけアドバイスをするのなら――」
「お母さんの罪は私の罪じゃない」
晴臣の言葉にかぶせるように蝶子はきっぱりと言った。それを見た晴臣は心底うれしそうに目を細める。
「そのとおりだ。君が気に病むことじゃない。それに、お母さんの罪だと決まったものでもなさそうだし」
公平と紀香は最初こそ仲がよかったように見えたが、数年もすると仮面夫婦になった。公平は紀香の言いなりではあったが、外には愛人がいるようで彼女を大切にしているとは言い難い。実際、紀香のいない場で『あの女と再婚したのは実家が金持ちだからだ』と毒づいていたこともあった。
晴臣は蝶子を見据えて言う。
「君のお母さんはそんなことをするような人間だったか?」
蝶子は唇をかみ、ふるふると首を横に振る。小夜子は美しいが控えめな女性だった。洋服もバッグも何年も同じものを使い続けるタイプで金遣いが荒いようなところはまったくなかった。
「会社の人に聞いてみたこともあったんです。でも、みんな口をつぐんでしまって……」
「まぁ、お母さんの横領が真実でもそうでなくても、社員としてはうかつに話せない内容だな」
「はい。なので、真相はわからないままで。父は当然その話をしたがりませんし」
「なるほど、事情は理解した。でも、俺が言えることはさっきと同じだ。君が望むならできる援助はする。蝶子が自分で決めろ」
実家との関係をどうしたいのか、それは蝶子自身の決めること。晴臣はそう言いたいのだろう。彼は続ける。
「ただ、ひとつだけアドバイスをするのなら――」
「お母さんの罪は私の罪じゃない」
晴臣の言葉にかぶせるように蝶子はきっぱりと言った。それを見た晴臣は心底うれしそうに目を細める。
「そのとおりだ。君が気に病むことじゃない。それに、お母さんの罪だと決まったものでもなさそうだし」