冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 明日のデートを思うだけで、心が浮き立つ。

(身の程知らずだとわかっているけど、会えるだけでもうれしい)

 翌日。蝶子は白い襟のついたややかしこまったワンピース姿で、晴臣から指定された店に向かう。日本一と名高い老舗ホテルの上階にあるフレンチレストランのなかに入ると、先に着いていた晴臣が片手をあげて蝶子に合図を送った。

「ご、ごめんなさい! お待たせしてしまって」

 蝶子は慌てて彼に駆け寄り、立ったまま頭をさげた。

「別に。時間どおりだ」

 やや冷淡に言って彼は立ちあがると、蝶子のために椅子を引いた。特別に女性扱いしてくれているわけではなく、マナーとして身についているのだろう。
 淡いブルーのシャツにネイビーのジャケットというシンプルなファッションが彼の品のよさをより引き立てている。

(あ、おそろい)

 蝶子のワンピースもネイビーなので、まるで合わせてきたかのようだ。こんなささいなこともうれしくて、蝶子の頬は自然とゆるんでしまう。椅子に腰かけた蝶子は店内を見渡して、小さくつぶやく。

「素敵なお店……」

 蝶子がこの店を訪れるのは初めてだ。紀香が外資系の派手なホテルを好むので、国内資本のホテルに来る機会は少ないのだ。クラシカルな内装がなんとも蝶子好みで、高級店なのに気取った空気がなく居心地がよい。
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