冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「君は成人した大人だ。本来なら君が自分で決めていいことだ。誰の許しを得る必要もない」

 理屈はわかる。だが……蝶子は言葉を詰まらせた。

「やっぱり。なかなか根深いな」

 晴臣はじっと目を細めて、丁寧に言葉を重ねる。

「君の意思など無視してこのまま連れ去ってしまってもいんだが……それだと、支配者があの継母から俺に取って代わるだけだしな」

 晴臣は自分のことをとても大切に扱ってくれる、その事実が蝶子に勇気を与えた。

(紀香さんは許さないだろう。それに、一緒に暮らしたら私のダメなところがますますバレて嫌われてしまうかも……だけど!)

 まっすぐに彼の顔を見あげて、蝶子は口を開く。

「あのっ、私、考えます。ちゃんと自分で」

 必死な声は裏返って震えていた。だが、晴臣は笑ったりせず真剣な表情で受け止めてくれる。

「店を出るまでに結論を出してくれると助かる。うちに来ないなら、別にどこか安全な場所を探すから」

 そして、食事を終えてふたりは店を出た。飲食店の並ぶエリアなので、外は賑やかな喧噪に満ちている。

「結論は出たか?」
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