冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「えぇ!?」

(傷つくって晴臣さんが? それはどういう意味で?)

 すっかり慌てふためいている蝶子に晴臣は悪戯っぽい目を向ける。

「冗談だ。君はくるくると表情が変わって、かわいいな」

 蝶子は思わずぽっと頬を染めたが、自分の勘違いにすぐに気がつき悲しくなった。

(うぅ。今のかわいいは、間違いなく子どもか動物に対するのと同じトーンだ)

 ダイニングチェアに腰をおろした晴臣は「ふぅ」とひと息ついて、ネクタイをゆるめる。男らしい首筋に蝶子はドキドキして、ぱっと目をそらす。

「晴臣さん、お夕食は?」

 時刻はまだ夜二十時、晴臣にはありえないほど早い帰宅時間だ。この時刻ならまだ食事を済ませていないかもしれないと思い蝶子は聞いた。

「あぁ、俺はまだだ。君は?」
「私はさっき簡単に作って済ませました。あの、残り物で構わなければ用意しましょうか」

 蝶子の言葉に晴臣は目を丸くしている。失礼な発言だったかと、蝶子は焦って言葉を重ねる。

「ごめんなさい! 残り物は嫌ですよね。えっと、リクエストがあれば作りますし、それともなにか買ってきましょうか」
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