冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
「いや。余っているものがあるなら、ありがたくいただく。そうではなくて……君が料理をするのが少し意外だった」
「そうですか?」
「箱入りのお嬢さまとばかり思っていたから」

 蝶子は少しだけ得意げにほほ笑んでみせた。

「料理だけは結構自信があるんですよ。今夜のメインは肉じゃがだったんですが、男性には物足りないかもしれないので、簡単なものでよければもう一品くらい作りますね」

 キッチンに入り冷蔵庫をあけながら、蝶子は晴臣に聞く。

「なにかリクエストはありますか?」
「ありがとう。卵焼き、頼んでもいいかな」
「了解です! 甘いのと、しょっぱいのと、出汁巻きと、どれがお好みですか?」
「甘いのを」

 蝶子は心を込めて卵焼きを焼いた。余りもののお味噌汁とお浸し、肉じゃがに卵焼き。晴臣に出すには庶民的すぎる献立かもしれないが、味には自信がある。
 晴臣はひと口食べて、すぐに「うまい」と言ってくれたので、蝶子はほっと安堵した。
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